協議離婚は、離婚全体の9割を占めています。夫婦が離婚することで合意し、離婚届を提出すれば、それだけで有効に成立します。ただし、夫婦間に未成年の子がいる場合は、どちらかを親権者と定めなければなりません。
○別居は必要?
離婚届の用紙には「別居する前の住所」の記入欄があり、届けを出す前に別居しているのが前提となっているようです。確かに多くの場合は別居を経て離婚に至るのでしょうが、かといって別居することが要件となっているわけではありません。
いわゆる熟年離婚の場合、家庭内別居(=表面的には同居)の状態を経て離婚に至るというパターンも少なからずあると思われます。
○勝手に離婚届を出されたら……
離婚届が提出されると、市区町村の窓口は、形式的な要件が整っていれば受理します。時々耳にするのが、一たんは離婚するつもりで離婚届に署名捺印したが、後で気が変わり、今は離婚する意思はない、しかし相手がそのまま離婚届を提出し、それが受理されてしまったというトラブルです。
このような事態を防ぐため、さらには偽造された離婚届が受理されてしまう事態を防ぐため、離婚届の不受理の申し出をすることができます(戸籍法27条の2)。
○離婚届を提出する前に
協議離婚が成立するためのハードルが低いことも一因だと思うのですが、そのときの勢いというか、「とにかく離婚したい」という思いが先に立ってしまって、財産分与や養育費に関することを取り決めずに離婚届を提出してしまったという話を耳にすることがあります。
しかし、これは賢明な選択とは言えません。
離婚後の生活を見据え、特に財産分与や養育費、慰謝料など「お金」に関することは離婚届を出す前にきちんと話し合い、合意した内容は離婚協議書として書面化し、公正証書にしておくことを強くおすすめします。そして、相手方が話し合いに応じようとしないときや話し合いが難航したときは、ためらうことなく調停を申し立てるべきでしょう。